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ついに登場。「明日なき暴走」30周年記念エディション。この手の「新装版」とか「何周年記念特別版」は、だいたいお約束としてデモとか未発表とかのレアトラックを集めたボーナスディスクがついてくる。しかし、意地悪な言い方をすれば、デモだの未発表曲だのというのはしょせん「ボツ」であり、当時アーティストが「世間に対し発表するには値しない」と判断したものだ(すべてがそうとは限らないにしても)。そのアーティストの音源ならボツでも何でもいいから片っ端から聴きたい!っていうのはよほどのファンだけであって、一般人にとっては、冷静に考えればそれほど惹かれるアイテムではない。
しかし、これはまったく格が違う。まず、余計なボーナストラックなどいっさい入っていない。オリジナルアルバムの8曲をリマスターしただけだ。じゃあなにが特別なのかと言うと、DVDが2枚もついてくる。1枚は、このアルバムが発表された1975年当時のライヴ映像。しかも「オマケ」的なケチくさいものではなく130分の堂々たる作品。BBCが撮影したというので映像もしっかりしている。「発掘映像」にありがちな「ま、貴重な映像なんだからこの程度のクオリティでも我慢してよ」というエクスキューズはここにはいらない。スプリングスティーンのファンなら、まずこれだけで買いだろう。更にもう1枚のDVDはアルバム製作のドキュメンタリーで、これはややマニア度が高くなるが、貴重映像満載で、もちろんこれとて単独のDVDとして商品化できるぐらいの価値はある。
私は高校1年生のときにバイトして当時まだそれほど普及していなかったCDプレイヤーを買い、最初に購入したCDソフトが、当時3500円だった「明日なき暴走」だった。しかしこのアルバムは録音があまりよくないのか、妙にこもった音で、「え、CDってこんなん?」とえらいショックを受けた覚えがある。今回デジタルリマスターされた音を聴くと、まあ確かに以前よりはクリアな音になっているが、やっぱり75年当時の他の作品と比較してもあまり音は良くない気はする。その点は残念。今回飛躍的に音が良くなって感動しちゃうことを期待してたんだけどなー。
と言いたいことは尽きないが、75年のライヴ映像だけが目当てでも充分に買う価値ありだと結論づけておこう。筋肉もりもりで拳を振り上げて歌うスプリングスティーンの映像しか見たことがない人には、暗闇の中にうずくまって独り言のように詩をつぶやくスプリングスティーンの姿は新鮮だろう。
なお、本品の日本盤価格は6720円だそうだが、よーっぽど英語が苦手で、字幕代に何千円でも払うという人以外、絶対に買ってはいけない。amazon.co.jpでアメリカ盤を買えば4000円未満(送料無料)で買えるし、そもそもアメリカのamazon.comでは25.98ドルで売られているのだ。DVDはリージョンフリーなので普通に再生可能。安心して輸入盤を買おう。まったく消費者をナメるのもいい加減にして欲しいね。せっかくのすばらしい作品なのに気分が悪くなるよ。


